今こそ、採用ブランドの確立を!

はじめに

帝国データバンクの従業員の離職や採用難等による人手不足を要因とする「人手不足倒産」の発生状況調査によると、「2025年上半期(1-6月)の人手不足倒産は202件発生し、上半期としては2年連続で過去最多を更新した。
『2024年問題』が懸念された『建設業』や『物流業』の倒産が数多く発生し、労働集約型の『サービス業』でも増加が顕著だった。デジタル投資による生産性向上が進まないなかで、労働投入量の増加が不可欠な中小企業にとって、活発化する転職市場で人材確保に苦戦するとみられ、人手不足倒産は今後も高水準での推移が見込まれる。」とのこと。

  出典:帝国データバンク 「人手不足倒産の動向調査(2025年上半期)」

本稿では、このような死活問題ともいえる極めて厳しい状況下でも、優秀な人材を流出することなく、そして、新規採用を優位に進めるための戦略として、採用ブランディング施策を提案します。今や採用ブランドの確立は、優秀な人材を引きつけ、維持するために不可欠です。採用ブランドを確立するためのステップバイステップのガイドを共有します。採用ブランドとは何か、なぜ重要なのか、そしてどのように効果的に構築できるのかを述べたいと思います。

採用ブランドとは?

採用ブランドとは、企業が従業員や潜在的な従業員に対してどのような存在であるかという
認識のことです。これは、企業の文化、価値観、従業員への待遇、成長の機会など、さまざま
な要素によって形成されます。強力な採用ブランドは、企業が優秀な人材を引きつけ、維持す
る上で大きなアドバンテージとなります。

なぜ採用ブランドが重要なのか?

採用ブランドは、以下の点で重要です。

  • 優秀な人材の獲得
    強力な採用ブランドは、企業を魅力的な職場としてアピールし、優秀な人材を引きつけます。
  • 採用コストの削減
    魅力的な採用ブランドは、応募者の数を増やし、採用プロセスを効率化することで、採用コストを削減します。
  • 従業員の定着率の向上
    従業員が企業の文化や価値観に共感し、満足している場合、定着率が向上します。
  • 企業の評判の向上
    良好な採用ブランドは、企業の評判を高め、顧客や投資家からの信頼を得るのに役立ちます。

採用ブランドを確立するためのステップ

採用ブランドを確立するための推奨ステップは以下のとおりです。

1. 現状の評価

まず、現在の採用ブランドがどのような状態にあるかを評価します。これには、従業員、候補者、業界関係者からのフィードバックを収集することが含まれます。

  • 従業員へのアンケート
    従業員に、企業の文化、価値観、職場環境について尋ねます。
  • 候補者へのアンケート
    面接プロセスや企業の評判について尋ねます。
  • オンラインレビューの分析
    GlassdoorやLinkedInなどのサイトで、企業のレビューを分析します。
  • 競合他社の分析
    競合他社の採用ブランドを調査し、自社の強みと弱みを比較します。

2.ターゲットオーディエンスの特定

次に、どのような人材を引きつけたいかを明確にします。ターゲットオーディエンスのスキル、経験、価値観、キャリア目標を定義します。

  • ペルソナの作成
    理想的な候補者のペルソナを作成します。ペルソナには、年齢、性別、学歴、職務経験、スキル、価値観、キャリア目標などの情報を含めます。
  • ターゲットオーディエンスのニーズの特定
    ターゲットオーディエンスが何を求めているかを理解します。給与、福利厚生、キャリアアップの機会、ワークライフバランスなど、重要な要素を特定します。

3.価値提案の定義

ターゲットオーディエンスにとって魅力的な価値提案を定義します。これは、企業が従業員に提供できる独自の利点や機会をまとめたものです。

  • 企業の強みの特定
    企業の文化、価値観、職場環境、成長の機会など、強みを特定します。
  • ターゲットオーディエンスのニーズとの整合
    企業の強みがターゲットオーディエンスのニーズとどのように整合するかを検討します。
  • 独自の価値提案の作成
    競合他社と比較して、企業が提供できる独自の利点を強調します。

4.メッセージングの作成

価値提案を効果的に伝えるメッセージングを作成します。メッセージングは、企業のウェブサイト、採用資料、ソーシャルメディア、求人広告などで一貫して使用する必要があります。

  • 明確で簡潔なメッセージ
    ターゲットオーディエンスが理解しやすい、明確で簡潔なメッセージを作成します。
  • 感情的なつながりの構築
    企業の文化や価値観を伝え、感情的なつながりを構築します。
  • ストーリーテリングの活用
    従業員の成功事例や企業の歴史など、ストーリーテリングを活用してメッセージをより魅力的にします。

5.コンテンツの作成

メッセージングをサポートするコンテンツを作成します。これには、ブログ記事、ビデオ、インフォグラフィック、ソーシャルメディアの投稿などが含まれます。

  • ターゲットオーディエンスに合わせたコンテンツ
    ターゲットオーディエンスが興味を持つコンテンツを作成します。
  • 多様なコンテンツ形式
    さまざまなコンテンツ形式を活用して、メッセージを効果的に伝えます。
  • 定期的なコンテンツの更新
    定期的にコンテンツを更新し、最新の情報を提供します。

6.チャネルの選択

ターゲットオーディエンスが利用するチャネルを選択します。これには、企業のウェブサイト、ソーシャルメディア、求人サイト、イベントなどが含まれます。

  • ターゲットオーディエンスの利用チャネルの特定
    ターゲットオーディエンスがどのチャネルを最も利用するかを調査します。
  • チャネルの最適化
    各チャネルに合わせてコンテンツを最適化します。
  • 一貫性のあるブランド体験
    すべてのチャネルで一貫性のあるブランド体験を提供します。

7.従業員のエンゲージメント

従業員をブランドアンバサダーとして活用します。従業員に、企業の文化や価値観を共有し、採用活動を支援するよう促します。

  • 従業員への情報提供
    従業員に、企業の採用ブランドに関する情報を提供します。
  • 従業員へのトレーニング
    従業員に、ソーシャルメディアでの共有や候補者とのコミュニケーションに関するトレーニングを提供します。
  • インセンティブの提供
    従業員に、採用活動への参加を促すインセンティブを提供します。

8.測定と改善

採用ブランドの効果を測定し、必要に応じて改善します。

  • KPIの設定
    採用ブランドの効果を測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。KPIには、応募者の数、採用コスト、従業員の定着率、企業の評判などが含まれます。
  • データの収集と分析
    定期的にデータを収集し、KPIを分析します。
  • 改善策の実施
    分析結果に基づいて、採用ブランドを改善するための対策を実施します。

まとめ

採用ブランドの確立は、時間と労力を要するプロセスですが、優秀な人材を引きつけ、維持するために不可欠です。上記のステップに従うことで、企業は強力な採用ブランドを構築し、競争優位性を確立することができます。継続的な評価と改善を通じて、採用ブランドを常に最適化し、変化する市場のニーズに対応していくことが重要です。