日本経済を支える中小企業、Excelで始めるDXでブルーオーシャン
日本の企業を支えるのは、99.7%を占める中小企業。中小企業ではDXに関心があるもののなかなか一歩を踏み出すのが難しい状況です。スキル不足やそもそも人材不足、予算不足と3F(3つの不足)が主因です。これを打開し中小企業がExcelによるDXで持続的にブルーオーシャンを享受する方法を伝授します。
ExcelによるDXのメリットとデメリット
Excelで始めるDX 5つのメリットとは
- 社員みんなが使える慣れ親しんだ神ソフトであること
直観的操作が秀逸で、複雑な計算やシミュレーションができて、ピボットテーブルによるマトリクス集計も瞬時にこなし、データベースとしても使え、究極的にマクロによる自動化までできてしまう正に神ソフト - 何といってもソフトウェアへの追加投資がゼロ
ほぼ全ての企業が既に導入しているExcelをプラットフォームとするDXなので、新たなソフトへの投資は不要 - これまでの膨大な蓄積データをそのまま踏襲できてしまう
永年に亘り蓄積されて来た各種データから必要なデータを抽出し、様々な角度から分析でき戦略的施策が短時間で立てられる。他のシステムへの移行が不要なので、インポートエラーが多発しがちで面倒な移行作業が回避できる - スキルさえあれば自社で構築できてしまう痒い所に手が届くシステム
中堅以上の企業で今人気のクラウドシステムではカスタマイズが難しく、結局はCSVファイル形式にダウンロードしExcelで手動もしくはマクロを組んで自社が求めるデータに加工する企業が多くあるなか、初めからExcelで構築するのでシームレス、ワンストップで求めるデータから資料を自動作成できる - Excel×AIで最先端のDXを行く
最新のExcelバージョンではAI関数やAI機能(Copilot)が利用可能となっており、Excelの様々な機能をプロンプト(して欲しい処理の依頼文)を入力することでAIが処理してくれる。プロンプトは自動入力することも可能なのでさらに省力化、業務効率化が可能。さらにはAIによるマクロの自動生成も可能であり、マクロ初心者でも高度な自動化が可能
ExcelによるDXのデメリットとは
一方で、脱Excelを標ぼうするDXコンサルタントも多数おられます。その主な理由は以下の4点に集約されます。※
※参考にさせていただいたサイト:ExcelはどうしてDXを阻むのか<Excel依存からの脱却事例と、共存方法>https://app.researchr.work/researchrblog/excel-prevent-dx
- 業務の属人化
Excelの魅力の一つとして、複雑な関数やマクロを使って高度な計算や操作を行える点が挙げられます。しかし、これが度を超えると、シート内が非常に複雑化し、他の担当者が追いつくのが難しくなります。結果として、一部のエキスパートだけが操作できる「ブラックボックス」のようなファイルが増えることで、業務の効率性や継続性が脅かされる - データの分散
DXの核心には、データの一元管理とその迅速な活用が求められます。ところが、Excelの利用方法はデータの分散を招きやすいという問題があります。一般的に、複数の担当者が異なるExcelファイルで業務を進めることが多く、これにより情報の断片化や整合性の喪失、二重入力といった課題が生まれることが多い - セキュリティリスク
セキュリティはDXの進行において最も重要な要素の一つです。多くの企業がデータ保護の強化に注力していますが、Excelにはその点でのリスクが伴います。具体的には、ファイルの共有やメール送信による情報漏洩、不適切なパスワード管理、バージョン管理の不備による誤って古いデータの利用など、さまざまなセキュリティ上の問題が潜んでいる - Excelの仕様上の制限
Excel最新版の仕様制限としては下表のとおり。ワークシートの行数制限が1,048,576 行、列数制限が16,384 列となりますので、300人以上の中規模および大企業では、ビッグデータ分析等膨大なデータ解析は不可能といってよい。また、各制限に近づくに従って処理速度も遅くなるのでスピードを要する処理は厳しいといえる
Excel の仕様と制限(DX関連一部抜粋)
機能 | 最大数 |
開くことのできるブック数 | 使用可能メモリとシステム リソースに依存 |
ワークシートの行数と列数 | 1,048,576 行、16,384 列 |
ブックのシート | 使用可能メモリに依存 (既定値は 1 シート) |
セルの固有の書式設定/セルのスタイル | 65,490 |
ユーザー設定の関数 | 使用可能メモリに依存 |
並べ替えに使用するキー | 1 回の並べ替えでは 64、連続して並べ替えるときは無制限 |
取り消し可能回数 | 100 |
ブックのパラメーター | ブックあたり 255 個のパラメーター |
フィルターのドロップダウンの一覧に表示されるアイテム | 10,000 |
データ モデル ブックのメモリ ストレージとファイル サイズの最大制限 | 32 ビット環境の仮想アドレス空間は 2 ギガバイト (GB) で、Excel やブック、また同じプロセスで実行するアドインで共有されます。 データ モデルのアドレス空間のシェアは 500 ~ 700 メガバイト (MB) まで増やすことができますが、他のモデルやアドインが読み込まれている場合は少なくなることがあります。 64 ビット環境では、ファイル サイズに対し、ハード制限はありません。 ブックのサイズは、利用可能メモリとシステム リソースでのみ制限されます。 |
ファイル名の長さ | 218 文字 – これには、ファイルパスが含まれます。 たとえば、C:\Username\Documents\FileName.xlsx など。 |
ExcelによるDXのデメリットを克服し成功するためには
前述のExcelによるDXのデメリットはメリットの裏返しでもあります。ExcelによるDXを成功させるためには、3つのデメリットを克服し推進することがとても重要となります。「業務の属人化の排除」「データの集約」「セキュリティ対策」の3つを確実に行い、実践することがとても重要となります。
ブラックボックス化を防ぐために、きちんとした仕様書、運用マニュアル、マクロ内にどういった処理なのかのコメントを入れておく等の対策により、属人化を防ぎましょう。
また、データの分散を防ぐためには、共有ファイルサーバ上に各データごとに格納フォルダを取り決め、ファイル命名規則もしっかりと取り決めて日々それを守りながら業務を進めることです。特に同じデータの複数回入力は最も効率を落とすので避けるべく、VLOOKUP関数で引っ張ってきたり、マクロで転記させたりして対応しましょう。なお、「入社台帳」「従業員台」帳等Excelをデータベースとして利用する場合には、列ごとにどの情報を入力するか、行にはセルのデータ形式を絶対に変更せずデータ入力をすることが肝要です。例えば入社日の列に年月日ではなく『入社日未定』等の文字列を入れたり、社員番号のセルの初期値は数字にもかかわらず、コピペにより文字列の番号を入れたりすることは絶対にさけてください。
セキュリティに関しては、共有ファイルサーバの各フォルダごとにアクセス権限を設定すると共に、社外からアクセスする場合にはVPNを張ったうえでアクセスさせることです。このようなハードの面からの対策と併せて、それ以上に重要なのが人的ミスや作為的な情報漏洩、いわゆるソフト面からの対策です。会社として、『情報セキュリティ方針』『情報セキュリティ規程』をきちんと定め、『情報セキュリティ・マニュアル』を策定し、パート・アルバイト・業務委託等会社の業務に係わる全ての従業員に周知徹底すると共に定期的にアップデート、従業員教育を実施することで情報セキュリティリスクを極小化させることが重要になってきます。
Excelの仕様上の制限については、ブックを分割する等制限を回避する方法もないことはありませんが、その分使い勝手が悪くなります。300人以上の中堅企業になるとExcelですべてを賄うことは難しくなってくるでしょう。250人を超えてきた頃には、ERPやクラウドシステムの導入・移行を検討すべきです。しかし、中小企業がDXに低コスト且つスピード感をもって取り組み成功裏に進めるためには、ExcelによるDXが最適といえるでしょう。
Excelで始めるDXでブルーオーシャン
ExcelによるDXのデメリット、リスクを回避し、ライバル他社に先駆けてスピードをもってDXを成功させること。これにより過去から現在に至る各種経営データをあらゆる角度からの分析が可能となり、先見性のある経営戦略が立てやすくなります。
DXは、デジタル技術を活用してビジネスプロセス、企業文化、顧客エクスペリエンスなどを根本的に変革し、企業価値を最大化する取り組みです。
例えばSWOT分析。自社の外部環境と内部環境をStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素で要因分析を実施し、先見の明をもってブルーオーシャン事業領域を新たに事業開拓すること。これを定期的に繰り返すことで持続的な利益の拡大が大いに望めます。
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