ハラスメント対応の失敗事例

ハラスメントは職場において、社員の労働意欲を削ぎ生産性を著しく低下させることから深刻な問題であり、人事にとっていかに改善して行くかが喫緊の課題です。厚労省のHPにはハラスメントの定義や判例が詳細に掲載されていますが、リアルに対応に迫られた場合なかなかセオリー通りにはいかないものです。特にセクハラの特質についてパワハラとの比較をしながら理解を深めることで、人事関係者の方々がより良い職場環境を築く手助けとなれるよう今回は、人事責任者としての対応の失敗事例を述べたいと思います。

それは、もう5年以上前のこと

事務部門の若い女性の訴えから始まりました。

部門長に胸を見られていて、気持ち悪いという訴えでした。この種の訴えは長く人事をやっている私にとって初めてのことでした。 そこで早速、部門長に事実確認をしたところ、全面的に否定。「彼女は自意識が強く、日頃からの関係性もあまり良くない。」とのことで、女性の周囲の近しい社員にもヒアリングしましたが、いずれも事実認定に至らずでした。

訴え者本人に、相手方は「見ておらず濡れ衣です。そんなつもりは全くありません。」と強く主張しており誤解の可能性が高いと思うので、今後は気にせず業務に集中して欲しい旨伝えましたが、絶対見られていますと強く反論。では、もうしばらく様子を見て欲しいとし、面談を一旦終了しました。

それから一ヶ月くらい経ち、訴え者から「相変わらず見られており、精神的にもダメージを受け先日心療内科にかかりました。」との話がありました。また、併せて、もともと海外への語学留学を考えていたとのことで、即退職の意向も示してきました。 これに対して、現場は今辞められると非常に困るので、もう少し留学を先にして欲しい旨説得するも聞き入れず、止むを得ず自己都合による退職として受け入れました。

事件はここから

退職後、3ヶ月ほどが経った頃、突然会社に手紙が届き、訴え者本人から慰謝料の請求をされたのです。あろうことか丁度その頃、訴えられた側である部門長が別の女性社員から同様のセクハラとして訴えられたのです。 再度、部門長に事実確認をするも全否定。周囲の社員へのヒアリングも範囲を広めて行ったところ、そもそも軽はずみな発言が目立つ、えこひいきが激しい、部門長として如何なものかなど否定的な証言が大半を占めました。前回の案件でもっと深堀をしておくべきであったと反省すること頻りでした。

結末

先の慰謝料の件は、顧問弁護士とも相談のうえ退職時基本給の3ヶ月分を解決金として支払うことにより双方合意に至るともに、加害者である部門長も地方事業所への人事異動のうえ、降格をさせることで案件クローズとしました。

まとめ

暴力や、相手の人格を否定するような暴言の繰り返しによるパワハラ、体を触るなどのセクハラは非常にハラスメント認定がし易いですが、相手を見つめる行為も要注意ということを教訓として学んだ次第です。視姦が直接的な身体的接触を伴わないため、立証が難しい場合もありますが、被害者の感じ方が重要となってくるということですね。 パワハラ認定においては、業務上の指導を超えた過度な叱責や威圧が認められるかの客観的な判断が重要になりますが、セクハラ認定においては、たとえ行為が客観的に見て軽微であったとしても、被害者がそれを精神的な苦痛として主観的に受け取る場合、セクハラと見なす必要がある場合があるということです。

パワハラとセクハラの認定基準を客観的および主観的な観点から理解すること、また、日頃の言動も含めて総合的な判断が必要なことを良く理解し、これらの問題に対する認識を深め、適切な対策を講じることが重要であることを痛感した次第です。

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